私立探偵 神山健介シリーズの第5弾
【本の帯】
2011年3月11日、東日本大震災が発生。
巨大津波の混乱の中、福島県いわき市でも無数の車が流された。
その一台の持ち主は、同僚の議員秘書を殺害し、6000万円の現金を手に逃走していた。
男は津波に呑まれて死んだのか。
金はどこへ?
捜索を依頼された探偵・神山健介は、愛犬・カイを連れ、男の足取りを追い被災地を北上し始める──。
過酷な状況下で、やがて炙り出される権力の影。
男は何を目指して漂流するのか。辿り着いた地で神山が知る、衝撃の真実とは……。
人気シリーズ空前の問題作!
【読書後記】
今回は 、アクションやカーチェイスは抑えてのサバイバルものになっている。
このシリーズは、毎回テーマが違っていておもしろい。
全くの謎解きものがあったり、猟奇ものがあったり、ハードボイルドがあったりと趣向を変えて読者を楽しませてくれる。
作者は、こんな小説を書きたかったんだろうなあ・・という思いが伝わってくる。
シリーズの定番は、ヒロインとの恋話やカーチェイス。
それが、今回は全く登場しない。
2011年3月11日、東日本大震災という未曾有の大災害をテーマにしている。
プロローグで災害の瞬間が描かれ、依頼を受けた探偵が災害の地をサバイバルする。
一人の男を探して福島から秋田まで。
身の危険や枯渇する食料・水。
被災地、避難所で暮らす人々の様子や届かない援助の状況。
等々が、これでもかこれでもかというくらいに描かれている。
当時のTV放送は被災に合わなかった人々用に作られたものであって、被災者が欲しい情報はほとんど放送されなかったという記述には驚いた。
探偵ものに不可欠な物語のひねりや謎解きは正直言ってないが、望郷の思いを感じさせる優れた作品だったと思う。