TVの旅番組や魚市場のレポート番組に、片隅の食堂が登場することがある。
取り立ての魚を料理して、漁師さんや魚市場の職員に料理を提供しているというあの食堂だ。
すぐ近くで競り落とされた新鮮な食材を出すので、生きがよくって安価な定食屋。
これに長年憧れてきたんだ。
福岡にも魚市場や野菜市場、古い商店街などに食堂はあるんだろうが、ついぞお邪魔する機会がなかった。

唐戸食堂
春の陽気に誘われて、ここ山口県は下関市の唐戸市場までやってきた土曜日。
1階の喧騒をよそに、2階の奥まで進むとあまり美しいとは言えない食堂がある。
中に入ると、10人ばかりが座れるカウンター席のみ。
狭い空間がいかにも市場食堂という感じだ。
ついでに言うなら、あまり美しくもない。
笑わないご亭主に、恐る恐る刺身定食を注文した。
するとぶっきらぼうに「終わりました」という。
そうか、今の時間は昼の12時頃だ。
市場は朝が早い。
刺身定食が終わっていても仕方がない。
と、言わんばかりのお返事。
それで、勇気を振り絞ってエビフライ定食を注文した。

今度は注文が通ったらしく、その後は次々に料理が並んだ。
腹を開いたエビ三匹とポテトサラダにキャベツがメインディッシュ。
それに小鉢と味噌汁、そして小盛ごはん。
普通の定食じゃあないか。
内心、ちょいとガッカリ。
しかし、平凡に見えたのは見栄えだけだった。
一口噛んでで見ると、歯ごたえ十分だ。
厚みがあって、ふんわりしている。
ころもはカリッと揚がっている。
エビの風味がしっかり効いている。
流石は市場食堂。
早い時間におすすめの食堂だ。
追伸
灰皿が並んでいるので、煙に弱い人は要注意だ。